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低被ばく・高スループットの80列CTで人間ドックの胸部検査を低線量CT撮影のみで実施

SilverBeam Filterを用いた低線量撮影と自動化ソリューションによる
運用で1日最大80 名の検査に対応

JR東京総合病院集合写真

JR東京総合病院

JR東京総合病院(401床)では、2024年4月にリニューアルした人間ドックセンターで、胸部検査の標準メニューに低線量CTを取り入れた。
そのための装置として導入されたのが、キヤノンメディカルシステムズの80列CT「Aquilion Serve」だ。SilverBeam FilterとAIを活用した画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine-integrated(AiCE-i)」による被ばく低減だけでなく、多くの受検者に対して効率的な検査が可能な自動化技術も評価された。人間ドックでのAquilion Serveによる低線量CTの運用について、放射線科の平岡祥幸部長、飯野啓二技師長、岡﨑孝晃主任に取材した。

胸部CT、胃内視鏡検査を標準メニューとした人間ドックを提供

平岡祥幸 部長様の写真
平岡祥幸 部長

JR 新宿駅から徒歩5分という絶好の立地にある同院は、1911年に鉄道院職員救済組合の事業として開設され、1987年の国鉄民営化を経て現在は東日本旅客鉄道株式会社(JR 東日本)の直営病院として運営されている。国鉄民営化を機にオープン化を図り、広く地域や一般の患者に安全で質の高い医療サービスを提供している。同院では、病棟などの建て替え工事を進めてきたが、2024年4月に「e棟」が、2025年3月には新病棟「A棟」が稼働し、救急外来の拡充や患者支援センターを新設した外来棟「B棟」のリニューアルと合わせて最新の医療サービスを提供する体制を整えた。

人間ドックセンターは、新築されたe棟に移設されリニューアルしてオープンした。1階と2階のフロアを利用して、すべての基本検査が受けられるようになったほか、マンモグラフィ、乳腺エコー、婦人科検診を行う女性専用エリアや多摩産木材を使った装飾など快適な受診環境にも配慮されている。

人間ドックの最大の特徴が、胸部のX線検査を廃止してすべて低線量CTで行っていること、上部消化管についても内視鏡検査を標準メニューとしていることだ。飯野技師長は、「受検者に対して負担が少なく、より質の高い検診を提供することを目的に低線量CTと内視鏡検査が標準メニューに導入されました」と述べる。平岡部長は、「オプションでの胸部CT検査を行う施設は増えていますが、CTのみで行うのはこの施設の特色だと思います。検診のCTのオプション検査は増えており、CTの検出能の向上と相まってX線撮影では見つからなかった異常をとらえることも出てきていますので、人間ドックとしては先進的な取り組みだと思います」と述べる。

低線量CT撮影のためAquilion Serve導入

飯野啓二 技師長様の写真
飯野啓二 技師長

低線量撮影のためのCTとして導入されたのがAquilion Serve だ。機種選定のポイントを飯野技師長は、「胸部X 線に代わる検査として低線量撮影はもちろんですが、人間ドックの多くの受検者を限られた時間内に検査できるスループットがポイントになりました」と言う。同院の人間ドックは8時15分の受付で一斉にスタートし、半日ですべての検査を行う。受検者は最大80人で、CT検査もこの人数を時間内に完了することが求められた。岡﨑主任は、「診療のCT検査は5分かかっていましたが、人間ドックではこれを3分以内で行う必要があることがわかりました。低線量撮影とスピードを条件として各社のCT装置を検討したところ、これをクリアしたのがAquilion Serveでした」と述べる。

〈自動化技術「INSTINX」で3分以内の検査を実現〉

検査時間の短縮で効果を発揮したのが、AquilionServeの自動化技術だ。
Aquilion Serve では、ガントリ内蔵のカメラ映像で受検者の身体を認識し、タッチパネルのワンタップで撮影位置まで自動で寝台が移動する(Automatic Camera Positioning)。同院では、これに加えてヘッドファーストとし、さらに寝台の高さを固定してステップ(踏み台)を使って受検者自身が寝台に乗る運用を取っている。最初からカメラによる体位の認識に最適な高さに設定して、寝台の昇降時間を省くためだ。
岡﨑主任は、「人間ドックの受検者は比較的若く健康な方が多いので、運用の工夫として取り入れました。Aquilion Serveではカメラでの認識から撮影位置までの移動時間が短いので、寝台の固定によって撮影準備までのタイムラグがなく、すぐに検査を始めることができます」と説明する。踏み台の使用は、20年以上前からCT検査を取り入れた人間ドックを行ってきた「JR 東日本健康推進センター」でのノウハウを生かしたものだという。

撮影では、SilverBeam Filter を使って低線量3D Landmark Scan で撮影した三次元データから正側2方向の位置決め画像を取得し、このデータを基に撮影範囲を自動で設定できる(Automatic Scan Planning)。岡﨑主任は、「FOVや撮影範囲をアシストしてくれて、ほとんど修正することなく撮影を行うことができます」と言う。
人間ドックのCT検査は技師2名で行い、呼び入れと撮影担当で役割を分けている。実際の運用では、呼び入れから検査室を出るまで2分40秒程度で行われており、効率的な検査が可能になった。人間ドックのほかの検査との兼ね合いもあるため、待ち時間が発生することもあるが、運用開始後の調査では、CTの最大待ち時間は受付から15分程度に収まっているとのことだ。

人間ドックセンターにおけるAquilion Serveの運用

〈SilverBeam FilterとAiCE-i による低線量撮影〉

Aquilion Serve では、銀フィルタによってX線の低エネルギー成分を低減することで被ばくを抑制するSilverBeam Filter と、画像再構成技術のAiCE-i によって低線量CT撮影が可能だ(図1)。岡﨑主任は、「被ばく低減については、SilverBeam Filter の効果が大きく他社との検討の余地はありませんでした。導入に当たっては、以前からの再構成法であるAIDR 3D*とAiCE-i で、管電流など条件を変更して画質を比較して検討を行いました」と述べる。

低線量CTの撮影条件については、放射線科医、呼吸器内科医による画像の評価を行って決定した(図2)。実際の導入前後の被ばく線量の比較では、導入前がCTDIで2.85±0.94mGy(N=90)だったのが現在は0.7±0.12mGy(N=95)に、実効線量は1.54±0.58mSvが0.41±0.06mSvとなっており、1/9 ~ 1/10に低減されている(図3)。平岡部長は線量の設定について、「肺野条件だけであれば、さらに線量を下げることは可能ですが、CTで撮影された範囲はチェックしたいという当院の方針もあり、縦隔条件でも診断ができるだけの画質を担保するため、ある程度の線量を確保しました」と説明する。
岡﨑主任は、「縦隔条件では体格の影響を受けやすく線量不足になることもありましたが、AiCE-i によって縦隔条件でも病変検出ができるだけの画質が得られています」と述べる。

人間ドックの読影は、非常勤の放射線科医による一次読影と、呼吸器内科医などによる二次読影のダブルチェックで行っている。平岡部長は、「放射線科は直接人間ドックの読影には携わっていませんが、低線量CTの撮影プロトコールの作成や、読影の基準や質の管理を行っています。低線量CT導入をきっかけに、人間ドックでどこまでチェックし、どうやって取り組むか施設としてコンセンサスが得られたことは、検診の質を担保するためにも意義が大きかったと感じています」と言う。

循環器内科や消化器内科でも人間ドックからの受診が増加

岡﨑孝晃 主任様の写真
岡﨑孝晃 主任

低線量CT導入後、肺以外の疾患でも病変を指摘され病院の診療科を受診する件数が増えている。超音波では指摘されなかったが、低線量CTで膵臓の主膵管の拡張が指摘され、精査につながった例などもあるという。平岡部長は、「消化器内科、呼吸器内科などで人間ドックでの指摘で受診される患者数が増えています。人間ドックからの紹介の外来枠を設けて対応している診療科もあります」と述べる。

低線量CTで冠動脈の石灰化が指摘され、冠動脈CT検査や循環器内科への受診にもつながっている。岡﨑主任は、「冠動脈CTの検査枠を3倍程度に増やして対応していますが、それでも枠が埋まっている状態です」と言う。平岡部長は、「低線量CTを取り入れて初年度ということで所見が増えている可能性はありますが、冠動脈の異常が無症候で指摘されて受診につながり、症状が出る前に治療できるのはメリットだと思います」と述べる。

低線量CTを導入した検診でさらなる精度の向上

初年度は1日60人でスタートしていたが、2年目を迎えて当初の想定通り80人の受け入れが始まる予定だ。飯野技師長は、「この1年でCTを含めて運用の経験を重ねてきましたので、万全の体制で受け入れることができると思います」と述べる。平岡部長は低線量CTの可能性について、「従来は指摘が難しかった病変を見つけることができ、検診の精度が向上しているのは間違いないところです。
胸部の疾患だけでなく、ほかの領域の疾患の指摘も増えていますので、低線量CTの普及によって人間ドックなど検診での導入が増えていくことが期待されます」と述べる。

Aquilion Serve による高スループットの低線量CT撮影が、人間ドックの新たなトレンドをつくっていくかもしれない。

JR東京総合病院
東京都渋谷区代々木2-1-3
TEL 03-3320-2210
https://www.jreast.co.jp/hospital/
JR東京総合病院の写真
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一般的名称 全身用X線CT診断装置
販売名 CTスキャナ Aquilion Serve TSX-307A
認証番号 304ACBZX00001000