Vantage Elan / Active Edition 導入事例
Software Ver. 8.1がもたらす高画質かつ生産性の高い検査
新田 祥平 技師 医療法人葵 深谷中央病院 技師長
Vantage Elan / Active Edition 導入事例
新田 祥平 技師 医療法人葵 深谷中央病院 技師長
埼玉県深谷市に位置する深谷中央病院では、一般外傷をはじめ、人工関節や脊椎外科などの高度な整形外科疾患を扱う治療や手術の実績があります。以前より永久磁石MRI装置を使用していましたが、2024年9月より新たに1.5T超電導MRI装置であるVantage Elan / Active Edition(ソフトウェアバージョン8.1)を導入しました。
今回は、導入後数か月間の使用経験を通じて感じた、導入前後で検査の質がどのように変化したかについて紹介します。
― 装置選定時に、どのようなことを重視されましたか?
2D画像および3D画像の高画質です。
MRI検査の大部分は整形外科領域であり、術前・術後の評価に多く活用されています。そのため、病態や組織をより詳細に把握するためには、高分解能な2D画像の取得が重要でした。さらに整形外科医から任意断面での確認の要望もあったため、3D撮像も選定のポイントにしました。
Vantage Elanではこれらの検査要望に対して柔軟に対応できる性能があると確信し、選定しました。また、メーカーが変わることでの操作性の不安については、キヤノンメディカルシステムズ社製のCTを既に使用しており、コンソール画面や操作性などは統一されている部分が多く、特に問題ありませんでした。
― Vantage Elan導入後にどのような変化がありましたか?
術前評価の精度が向上しました。
永久磁石からの更新であるためSNRが大幅に向上し、ルーチン検査の画質も向上しました。さらに、かねてより希望していた2DのThin Slice画像も追加で撮像可能になりました。
例えば、膝関節の検査では前十字靭帯を目的として2㎜スライスのT2WIを撮像していますが、十分なSNRが得られています(Fig.1)。画質の向上により、脊椎の検査では整形外科医からも「術前に撮像する画像の質が向上したことで、事前のシミュレーションと相違がなくなった」とのコメントもあります。
― 検査時間についてはいかがでしょうか?
画質が向上し、3Dを含めても検査時間が短縮しました。
基本画質の向上とともに撮像時間が短縮され、検査枠をこれまでの1時間枠から30分枠に変更して実施できるようになりました。
当院では整形領域の検査で各コントラストを複数断面撮像するため、シーケンス数が多くなり1時間の検査枠を超えることもありました。更新後は30分枠でも時間延長なく効率的に検査を実施できるようになりました。また、臨床医からも要望のあった3D撮像は、3D撮像時間短縮技術である「Fast 3Dモード」を使用することで、ルーチン検査内で撮像できます。膝関節ではT2*WIシーケンスに使用しており、およそ3分30秒で膝全体が収まる範囲を撮像可能です(Fig.2)。
臨床科からの画質評価も高いため、現在では股関節のT2*WIにも使用しており、今後様々な部位で積極的に使用していきたいと考えています。
― 操作性はいかがでしょうか?
ForeSee Viewが特に使いやすいです。
コンソール画面で使用頻度が高いパラメータが最前面に表示されており、動線を意識した配置が直観的で非常にわかりやすく操作が容易です。
位置決めアシスト機能であるForeSee Viewはとても使いやすく、撮像する断面をMPRで事前に確認できるため、安心して検査に臨むことができます。ForeSee Viewを使用することで、前述した薄いスライス設定であっても画像枚数を増やさずに前十字靭帯のような目的組織を1回の撮像に収めることができるため、撮像時間の延長を抑えるという意味でも効果を感じています(Fig.3)。
また、前述したように当院ではキヤノンCTを使用しているので、MPRなどの後処理機能については導入後すぐに直感的に操作できました。後処理機能の中で特に重宝しているのが、全脊椎検査で使用するスティッチング機能です。各スライスを自動でつなぎ合わせ、WW/WLも各ステーションで調整してくれるため、特に考えずに簡単に使いこなせました。
― そのほかワークフローはいかがでしょうか?
コイルの使い勝手が良く、検査室内の移動も容易で検査効率も向上しました。
RFコイルの使い勝手が良くなりました。以前の装置では、コイルは各領域に対応した専用コイルを使用していたため、部位によってはコイルの選択に迷うことがありました。Vantage Elanには、4chフレキシブル SPEEDERという柔らかく軽い巻き付け型のコイルがあり、全身に使用できるため、コイル選択に悩む必要が無くなりました。また、MRI室内は、永久磁石設置時と比べて特に部屋が狭くなった印象はなく、スムーズに室内を移動できます。MRI室内の動線を確保するために機械室レスを採用したことも、効果的でした。
― 整形以外の検査はいかがでしょうか?
各領域で特長ある機能が使え、簡単に綺麗な画像が得られています。
検査数は多くありませんが、頭部や腹部の検査も行っています。頭部においてもルーチン検査の画質の向上と撮像時間が短縮されたことに満足しています。非造影MRAについてもFast 3Dモードを使用し、高画質を維持しながら撮像時間を短縮しています。さらに、脂肪抑制を併用しているためMIPのカッティングを行わなくても十分な画質が得られ、回転画像の作成から画像の転送まで簡単に行えます。
特に、DWIの画質改善は劇的でした。SNRや分解能の向上に加えて、低磁場から1.5Tへの更新で心配していた歪みの増加についても「RDC DWI」のおかげで、気にする必要がありませんでした。撮像時間の延長がほぼない点にも満足しています。(Fig.4)。
腹部ではMRCPを主に撮像しています。MRCPにもFast 3Dモードを使用しており、撮像時間が短くなることで検査枠が短くできることはもちろん、患者さんの負担を減らすことができる点にも大きなメリットを感じています。非造影下肢血管検査ではアシスト機能があり、従来に比べて簡単に撮ることができると期待しているため、(今は検査をしていませんが、)今後検査を増やしていきたいです。(Fig.5)
― 最後に導入後の満足度について教えてください。
MRI本体だけでなくサービス体制含めて満足しています。
導入前の期待以上に満足しています。画質や撮像時間、操作性についてはもちろんですが、新しい機能により検査の安定性も向上したため、検査の撮り直しも減り、より効率的に検査を実施できています。先生方からの評価も非常に高く、院長からは「これなら検査枠をもっと短くしてもいいのでは?」とのコメントももらっています。また、サービス体制についても満足しています。カスタマーエンジニアやアプリケーションスペシャリストの方が丁寧に対応してくれるため、会社としても信頼しています。さらに、WEBサービスについても満足しています。「MRIアプリケーションサポート」に掲載されている撮像方法の動画などを若手技師が中心となって勉強に活用しています。こちらのサイトには過去の画論*1の内容と使用シーケンスやPAS*2も掲載されているので、必要に応じて今後活用していきたいと考えています。装置やサービス体制など含めて全体的に満足度が高く、個人的にもおすすめできます。