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Vantage Gracian(以下、Gracian)
脳神経外科 Gracian
アップグレード導入事例

2日間*でVantage Gracianへ
アップグレードで実現した劇的変化

片岡 剛 先生 
医療法人社団いなほ会 頭とからだのクリニック かねなか脳神経外科 診療放射線技師

かねなか脳神経外科様 集合写真

東京都の新中野駅から徒歩1分の場所に位置する「かねなか脳神経外科」は、『健康寿命の延伸』という理念を掲げ、迅速な検査・診断、再発予防・対策、リハビリテーションの3本柱で診療を行っています。

かねなか脳神経外科様 外観

2020年6月:MRI導入
1.5T MRI装置「Vantage Elan(以下、Elan)」を新規導入
2021年12月:Gracian化
マグネットなどの主要部品を活用して1.5T DLR-MRIへアップグレード
2024年11月:Ver.8.1化
最新のソフトウエアバージョン8.1に更新

本記事では、アップグレードおよびバージョンアップにより検査の質がどのように向上したのかを紹介します。

Vantage ElanからVantage Gracianへのアップグレードにより、画質向上と撮像時間短縮が実現しました

Gracianに新たに搭載したディープラーニングを用いたデノイズ技術”Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)”により高速化時のSNRが大幅に改善され、検査全体が高速化されました。Elanでも30件/日近くの検査を実施していましたが、1検査に20分以上かかり、22時過ぎまで検査をすることもありました。Gracianでは1検査を約15分で完了でき、以前と同じ件数であれば19時には終了できます。最近はコンスタントに30件/日を超えるようになりましたが、Elanの時より早い時間で業務を終えることができます。
撮像時間短縮の大きな要因は、パラレルイメージング法「SPEEDER」、圧縮センシング法「Compressed SPEEDER(CS)」にAiCEを併用できる点です。さらに、頭部MRA撮像では、3D撮像高速化技術「Fast 3Dモード」とAiCEを組み合わせることで、画質を損なうことなく36%程高速化しました。(Fig.1)当院では頸部MRAを追加するケースも多く、こうした場面で恩恵を強く感じています。
画質向上では、特にFLAIRが劇的に変化しました。原理上SNRが得づらい撮像ですが、AiCEによるSNR向上によってパラメータの調整幅も広がり、さらに新しいIRパルス印加パターンである「Clusterモード」の追加により、各組織のコントラストも向上しています。(Fig.2)

Fig.1. AiCEを使用した頭部ルーチン検査
Fig.1.
AiCEを使用した頭部ルーチン検査
Fig.2. 画質向上と短時間機能
Fig.2.
画質向上と短時間機能

Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)の満足度について

まず、画質が非常に自然です。これは、AiCEのデノイズ強度の調整幅が広いことが大きな要因だと考えられます。強度は1~5段階で調整できるほか、Adjust機能により0.1単位での調整が可能なため、過剰なデノイズを避け、いわゆる”ちょうどよい”画質に仕上げることができます。さらに撮像後に強度調整が可能な点は非常に使いやすく重宝しています。事前に用意したPAS**内で完結する場合は問題になりませんが、追加撮像でパラメータ調整する場合、デノイズ強度の再調整のメリットを実感します。AiCEはほぼ全てのシーケンスに適用できるという汎用性の高さも非常に優れた点です。

Vantage GracianのVer.8.1ソフトウェアバージョンアップの有用性について

Ver.8.1では多数の新たなアプリケーションが搭載され、高速化と高画質化の両面で検査の質が向上しました。
高速化では、新たなパラレルイメージング技術「Exsper」が特に有用です。頭部領域のT1WIはSE法を用いますが、従来パラレルイメージングによる高速化が困難でした。ExsperはSE法にも適用可能であり、単純撮像・造影撮像を含め大きなメリットを感じています。
3D撮像では前述した「Fast 3Dモード」がGradient Echo法へも拡張され、レカネマブ投与患者のフォローアップで撮像する磁化率強調画像「eFSBB」にも使用できます。従来6分程度要していましたが、約3分で撮像可能になりました。(Fig.3)さらに、「Exsper」と「Fast 3Dモード」の組み合わせにより、3D FLAIR(0.65 mm iso voxel)も8倍速で撮像でき、検査の運用効率がより高まっています。(Fig.4)

Fig.3. eFSBBにFast 3Dモードを使用した画像
Fig.3.
eFSBBにFast 3Dモードを使用した画像
Fig.4. 3D FLAIRにExsperとFast 3Dモードを使用した画像
Fig.4.
3D FLAIRにExsperとFast 3Dモードを使用した画像

高画質化の面では、新たに搭載されたDWIの歪み改善技術である「RDC DWI」による改善効果が顕著であり、ルーチン検査において全例で使用しています。類似機能に「FASE DWI」もありましたが、コントラスト変化や撮像時間延長が伴うため、ルーチンでの使用が困難でした。一方、「RDC DWI」は、コントラストに影響を与えることなく、撮像時間の延長も約10秒にとどまり、実用性が非常に高いと感じています。DWIは非常に重要なシーケンスであり、わずかな時間延長で画質を大きく改善できる点は、臨床上、大きなインパクトになりました。(Fig.5)

Fig.5. RDC DWIの使用前後の同一患者の画像
Fig.5.
RDC DWIの使用前後の同一患者の画像

操作性向上による検査のさらなる効率化

1台で毎日30件の検査を実施するには操作性も重要であり、わずかな時間短縮が非常に有益です。Ver.8.1では操作手順が簡素化され、検査全体の所要時間の短縮に貢献していると感じています。
当院では時間短縮のため、ガントリ上のStartボタンを押して操作卓に向かうワークフローでしたが、新機能の「AutoStart」により、ドアを閉めると自動的に検査開始できるようになりました。また、位置決めアシスト機能「NeuroLine+」を常に使用しており、自動的に断面を合わせてくれます。さらに、認識した断面は断面連動機能「オートリンク」にて各シーケンスへ適応され、ルーチン検査ではコンソールをほとんど触らずに検査を進めることができます。空き時間に後処理ができるため、理想的なワークフローを実現しています。また、同グループに整形外科クリニックも併設しており、整形領域ではMPR画像を用いて事前に撮像断面を確認できる「ForeSee View」を活用することで、再撮像のリスクを軽減できています。加えて、画像再構成速度も向上し、MRAなどの3D撮像では明らかに速度が向上し、撮像後すぐに画像を確認できるようになりました。(Fig.6)後処理では、MPR処理に他の画像の位置・角度を参照して同一断面に再構成する機能が追加されました。この機能は撮像断面が異なる場合でも使用可能であり、例えば冠状断で追加撮像した椎骨動脈解離のBlack Blood画像を、軸位断の頭部MRAと同一位置でMPR再構成することが容易に行えます。これら機能により、画像比較や読影効率が向上し、時間短縮にも貢献しています。(Fig.7)

Fig.6. Ver. 8.1での新たなワークフロー(イメージ)
Fig.6.
Ver. 8.1での新たなワークフロー(イメージ)
Fig.7. 同一断面に再構成可能なMPR処理
Fig.7.
同一断面に再構成可能なMPR処理

全体的な満足度について

ElanからGracianへのアップグレードではルーチン検査における画質の向上と撮像時間の短縮が実現し、Ver.8.1へのバージョンアップでは追加撮像の効率化やアーチファクトの改善が図られ、高い満足感を得ています。
とりわけGracianアップグレードでは、AiCE搭載により単なるソフトウエア更新ではなく装置自体が一新されたと感じるほど大きなインパクトがありました。このアップグレードがわずか2日で完了*した点も非常に満足しています。装置の入れ替えのように、工事に1~2か月を要することがないため、患者さんへの影響や経営的な負担も最小限に抑えられました。これは、クリニック運営において非常にありがたいと感じています。
また、過去使用したキヤノンメディカルシステムズ社製MRI装置のトラブルの少なさにも驚いています。30件/1日の検査数でもトラブルがほとんどなく、気になる点があっても迅速に対応してもらえるため、装置が止まることもありません。当院のようなクリニックにとって非常に重要なポイントであり、メンテナンス面でも高い信頼と満足感を持っています。別施設でキヤノンメディカルシステムズ(旧東芝メディカルシステムズ)社製MRI装置を使用していた経験がありますが、新たな機能やバージョンがリリースされるたびに、ユーザーのニーズを的確に捉え、期待を超える進化を遂げていると実感しています。今後ともキヤノンメディカルシステムズのMRI装置を使用したいと考えています。

  • 実際の工期や作業内容に関しては、施設の設置環境により異なります。
  • ** PAS(Programmable anatomical scan):スキャン前にあらかじめ目的部位ごとの撮像条件などをプリセットする機能
  • *** 本記事のAI技術については設計の段階で用いたものであり、本システムが自己学習することはありません。

  • 記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。掲載内容は予告なく変更する場合があります。掲載内容はオプション構成品を含みます。

一般的名称 超電導磁石式全身用MR装置
販売名 MR装置
Vantage Elan MRT-2020
認証番号 225ADBZX00170000
類型 Vantage Gracian