鹿児島中央整形外科スポーツクリニック

― Vantage Gracianにアップグレードした経緯　
どのような背景で導入に至りましたか？

前田院長開業時に導入したVantage Elanは、画質の良さと短時間検査の実現が購入の決め手になりました。しかし、開業当初から1日あたりの検査数が20件近くと非常に多く、導入から1年足らずで「装置をもう1台増設した方がよいのでは？」といった声が上がるほどでした。ただし当院はビル内クリニックであるため、スペースや構造上の制約から増設は困難でした。結果として、既存のVantage Elanのみでは検査需要に対応しきれない状況が続いていました。そうした中、ディープラーニングを用いて設計したSNR向上技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」が搭載されたVantage Gracianが登場し、従来以上の検査時間短縮が期待できると考えました。さらに既存のVantage ElanをVantage Gracianにアップグレードできるスキームがあることを知り、詳細を確認したところ、数日間のダウンタイムで更新可能であると分かり、導入を決断しました。

— 数日間での導入はやはり魅力に感じましたか？

前田院長開業時1か月単位でMRI検査が停止すれば、多くの患者様にご迷惑をおかけすることになり、それは何としても避けたいと考えていました。実際の導入工程を確認したところ、病院受付終了後から祝日を挟み、計2.5日間^*1でVantage Gracianの設置が完了できるとのことで、非常に大きなメリットを感じました。これは導入を後押しする大きな要因となりました（Fig.1）。

― 検査時間は期待通り短くなりましたか？

福ケ迫技師「AiCE」によるSNR向上に加え、新たに搭載された撮像時間短縮技術「Exsper」を活用することで、検査時間が予想以上に短縮されました。「Exsper」は、パラレルイメージングの一種であり、従来法の「SPEEDER」と比較して、折り返しアーチファクトが発生しにくいという特徴があります。そのため、「SPEEDER」より倍速化が容易であり、より効率的に短時間検査が可能になりました（Fig.2）。また、撮像時間の短縮に有効な圧縮センシング技術「Compress SPEEDER」も存在しますが、「Exsper」の方が画質の鮮鋭度を維持できるため、ファーストチョイスとして使用しています。その結果、1日の検査件数が約4件増加しました。そして、1日の検査をより早く終えることができるようになりました。以前は21時頃までかかっていた検査が18時頃に終えることができ、ワークライフバランスの向上にも繋がっています（Fig.3）。

― 画質の面での変化はありましたか？

前田院長画質については、Vantage Elanの時点ですでに優れており、術前評価においても十分な画質が得られていました。Vantage Gracianへのアップグレードによって、基本画質がさらに向上しただけでなく、3D画像の活用範囲が大きく広がったと感じています。
特にCTのような画像が得られる「Bone like image」は重宝しており、専門領域である肘関節では骨棘や遊離体の描出がより明瞭になりました。中でも、椎体分離症の検査においては従来との明らかな違いを感じています。

福ケ迫技師「Bone like image」はVantage Elanでも撮像自体は可能でしたが、撮像時間が比較的長く、限られた検査枠の中では実際に活用するのが難しい状況でした。Vantage Gracianでは「AiCE」に3D撮像時間短縮技術「Fast 3Dモード」を組み合わせることができるため、より実用的な撮像時間で対応可能となり、現在では積極的に使用しています。

前田院長当院にはCT装置がないため、これまでは分離症などの症例において、検査を他院に依頼する必要がありました。しかし現在ではVantage Gracianの活用により院内で検査を完結できるようになっています。開業当初は骨の詳細情報を得る手段としてCT装置の導入も検討していましたが、MRIで十分な画像情報が得られるようになったことで、現在ではCTの必要性を感じることはほとんどありません（Fig.4）。

― ワークフローの面での変化はありましたか？

福ケ迫技師操作性では、Vantage Elanにも搭載されていた撮像断面アシスト機能「SpineLine＋」をはじめとした機能の計算速度が向上し、より使いやすくなりました。さらにVantage Gracianから新たに追加された「ForeSee View」は、撮像前に断面をMPRのように確認できる機能で、日常の検査にも積極的に活用しています。細かな靭帯や神経を描出する際にも、追加の位置決め画像を撮ることなく、本撮像から直接開始できるのは大きな利点です。
また、「ForeSee View」により、経験の浅い技師でも効率的に検査を行えるようになりました。解剖学的な視点で断面を設定するのは初心者には難しい場面も多く、例えば前十字靭帯の設定でも不安を感じることがあります。事前に正確な断面を確認できることで、判断に迷う場面が少なくなり、再撮像のリスクも軽減しました。誰でも効率よく安定した検査が行えるようになったのは大きな進化です。一般的な撮像断面アシスト機能は、特定の断面に限られることが多い中、「ForeSee View」は適用外の特殊検査にも活用できる汎用性の高さも魅力です（Fig.5）。

― 導入後の満足度について教えてください

前田院長導入後の満足度は非常に高いです。検査効率の向上に加え、患者様がスムーズに検査を受けられる体制が整ったことは、大きな成果だと感じています。また、新品装置を購入する場合と比較して、導入にかかる工期が非常に短く、コストパフォーマンスの面でも非常に優れていると評価しています。さらに、画質が向上したことで診断の精度が高まり、期待以上の効果が得られました。導入当初はデノイズ強度を高く設定していたため、ノイズがほぼ除去された画像にやや違和感がありました。しかし、「AiCE」はデノイズ強度の変更に加え、Adjustという詳細な画質調整が可能なため、現在では設定を最適化し、違和感のない画像を得られています。また、パラメータ調整によりSNRに変化が生じた場合でも後処理でデノイズ強度を再調整できるため、画像の一貫性と品質が保たれていると感じています。

福ケ迫技師以前は診療後に残業してMRI検査を行うことも多く、業務負荷が大きい状況でした。しかし、撮像時間の短縮と操作性の向上により、検査全体の効率が大きく向上し、ワークライフバランスの改善にもつながっています。加えて、高画質な画像を短時間で提供できるようになったことにも非常に満足しています。装置導入後もアプリケーションスペシャリストの方が寄り添って対応してくれるため、サービス体制にも安心感があります。MRI装置の性能・運用性、サービス体制のいずれも含めて、自信をもってお勧めできます。

• *1 Vantage Elanのソフトウェアバージョンや設置環境により、導入期間が変動する可能性がございます。
• ＊本記事のAI技術については設計の段階で用いたものであり、本システムが自己学習することはありません。
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