Vantage Fortian 整形外科 導入事例
Vantage Fortian導入で実現した迅速かつ高精度なスポーツ整形診療
増田 裕也 先生 ライオンズ整形外科クリニック 院長
Vantage Fortian 整形外科 導入事例
増田 裕也 先生 ライオンズ整形外科クリニック 院長
ライオンズ整形外科クリニックは、2024年4月1日に埼玉県所沢市のベルーナドーム向かいに開院した医療施設です。スポーツ医科学の分野で発展してきた医療を、プロアスリートのみならず地域のスポーツをする子供たちや高齢者の方々へ提供しています。
同クリニックは開院と同時にキヤノンメディカルシステムズ社製の1.5T MRI Vantage Fortianを導入しました。スポーツ整形の診療におけるその活用法や臨床的有用性について、ライオンズ整形外科クリニック 院長 増田 裕也 先生にお話を伺いました。
― 整形外科を専門とするクリニックで高磁場MRI装置を持つことの意義や重要性についてお聞かせください。
整形外科を専門とするクリニックでは、通常はX線撮影システムがあれば診療には十分と考えられがちです。しかし、スポーツ選手を診察する場合には、筋肉系の損傷評価が重要となるため、高磁場MRI導入が大きな強みになると考えました。
― Vantage Fortianに搭載されているDLR技術の印象はいかがですか?
今回、当院に導入したVantage Fortianは1.5TのMRI装置です。従来であれば高分解能画像を得るには3T装置が選ばれていたと思いますが、Deep Learning Reconstruction(DLR)を使用したデノイズ技術のAdvanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)や超解像技術Precise IQ Engine (PIQE)の活用により、1.5T装置でも短時間で高分解能な画像が容易に得られています。図1の踵骨外傷性骨折の症例にDLRを適用した画像では、診たい部位の描出がこれまで他院で見ていた3T画像と比べても遜色ないと感じています。
また、PIQEは再構成処理によって分解能を向上できるため、収集マトリクスを下げて撮像時間を短縮することも可能です。当院のようにMRIが1台のクリニックでも、多くの検査を効率良く回せる点は、運用上大きなメリットと感じています。
図2は、交通事故外傷における短時間撮像の症例です。強い痛みを伴う患者さんの検査では、撮像中に動いてしまうケースも少なくありませんが、T1WIやT2WIの矢状断像がそれぞれ約30秒で撮像できるため、モーションアーチファクトの少ない画像が得られています。
図3、図4は実際の肩関節、膝関節のルーチン検査画像ですが、短い撮像時間でも診断に十分な高画質な画像が得られています。
― Vantage Fortianを導入して運用上の最大のメリットは何でしょうか?
一般的な医療機関では検査枠を事前に設定してMRIを運用していることが多いと思いますが、Vantage Fortianは検査時間が短いため、当院では「検査枠を設けず、必要なときにすぐ撮る」という柔軟な運用を実現しています。これにより検査スループットも向上し、急な依頼でも当日の検査が可能になりました。患者さんに伺うと、「今日撮れるなら今日撮りたい」と希望される方が圧倒的に多く、そうしたニーズに応えられていることは、当院の大きな強みだと考えています。遠方から来院されるアスリートも多く、その日のうちにMRI検査と診断が完了する点は非常に助かっています。
当院で治療ができない場合でも、MRI画像をCDに保存してお渡しすることで、患者さんが地元で治療を始めるまでのスピードが大きく変わるため、大変喜ばれています。また、Vantage FortianはOpen Boreタイプの装置のため、他院で閉所恐怖症により検査が困難だった患者さんに対しても、撮像時間が短いことを説明することで、撮像が可能になったケースも少なくありません。ラグビー選手など、体格の大きな選手の撮像にも適していると考えています。
プロ野球においては、1軍の選手が負傷した際、2軍との入れ替え判断に時間的な制約があります。出場可否の判断や診断には迅速さが求められるため、ホームゲーム時にはすぐにMRI検査を実施できる体制を整えています。試合中に検査を行い、回復に10日以上を要するとの診断がつけば、その日のうちに2軍から選手を昇格させるなど、迅速な対応が可能となり、球団の運営にも大きく貢献しています。
― MR Bone Imageはどのように活用されていますか?
CT装置の導入が理想ではありましたが、スペースやコストの面で難しかったため、MRでCTのような画像が得られるMR Bone Imageは非常に有用です。特に腰椎分離症では、レントゲンでは描出困難な骨折線もMR Bone Imageで明瞭に確認でき、さらに脂肪抑制T2WIとの組み合わせにより、骨折の程度評価も可能となり、治療方針の決定に役立っています。
野球肘と同様に、気づかれていない「隠れ分離症」も多く、症状が酷くなる前に早期にキャッチアップできることはアスリートの将来を考えても非常に重要です。Fast 3DモードとAiCEを併用することで短時間での撮像が可能であり、検査時間を気にせず追加撮像できるのも嬉しい点です。
― 今後の展望についてお聞かせください。
当院のような「怪我をした直後のMRI画像」を取得できている施設は多くありません。こうした画像が蓄積されていくことで、将来的にアスリートの診療に役立つ貴重な知見が得られる可能性があります。怪我の経過を追う上でも、受傷直後の画像は非常に重要です。
今後も症例を積み重ね、早期治療への一助になることを目指しています。