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Vantage Orian
導入事例

地域に信頼される医療を支える
-DLR-MRIが切り拓く次世代の病院経営と検査体制-

武友 孝樹 技師 
公立那賀病院 医療技術部 中央放射線科

公立那賀病院

公立那賀病院の外観写真

和歌山県紀の川市に位置する公立那賀病院(病床:304床)は、紀の川市と岩出市、併せて人口13万人からなる那賀地域において、両市の経営事務組合を母体とする病院です。地域の中核病院として、災害拠点病院やがん診療連携拠点病院に指定され、医療を通じて地域住民の健康と福祉の向上に寄与しています。さらに、病院基本方針である「地域住民から親しまれ、信頼される病院」を常に目指し、日々診療を行っています。
同院では2023年11月に、キヤノンメディカルシステムズ社製1.5T Deep Learning reconstruction(DLR)-MRIであるVantage Orianを導入し、現在は臨床現場で稼働しています。今回は導入の経緯と導入後におけるMRI検査の変化について伺いました。

Vantage Orianを導入した理由

Vantage Orianの写真
図.1 稼働を開始したVantage Orian

今回のMRI装置導入にあたり、複数メーカーからの提案を比較検討し、当院の規模や検査内容に最も適した装置を選定しました。 当院におけるMRI検査の大半は日常診療でのルーチン検査が占めており、装置更新に際しては画質の改善に加え、 検査時間の短縮につながるスループットの向上も求められていました。
その中でも、Deep Learning技術であるAdvanced intelligent Clear-IQ Engine (AiCE)や、Precise IQ Engine (PIQE)による高画質化と撮像時間の短縮は非常に魅力的であり、 当院の要件を最も満たすものと評価しました。また、導入後の運用を見据えた際には、メーカーのサポート体制も重要な要素と考えており、近隣施設での評価や実際の説明から、 キヤノンは撮像プロトコル作成支援、新規検査時のサポート、検査フローの整備など、導入後も充実した支援を提供できる体制が整っていることが確認できました。 そのため、メーカー変更後であっても安心して使用できると感じました。
これらの点を総合的に評価し、Vantage Orianの導入を決定しました。

ディープラーニング技術は臨床にどのような影響を与えたのか

Vantage Orianの写真
図.2 総胆管結石症例におけるMRCP検査

AiCEはDeep Learningを用いたSNR向上技術で、画像のノイズのみを低減することが可能です。 AiCEにより、撮像時間やSNRに関係するパラメータを短縮したり、加算回数を減らした撮像条件など、SNRが低くなりやすい条件でも、十分な画質を確保できるようになりました。 さらに、2Dシーケンスだけでなく、3Dシーケンスや高速撮像技術と併用可能な点は大きな利点です。 実際にMRアンギオグラフィー(MRA)や拡散強調画像(DWI)、心臓検査など様々な検査に適用可能であり、検査全体のクオリティ向上に寄与しています。
MRCPと頭部MRAの画質は、特に臨床科の先生から好評です。従来、MRCP検査では呼吸同期がうまくできない患者さんに対して、成功するまで何度も再撮像を行う必要があり、 検査時間が延長してしまうことが少なくありませんでした。装置更新後は、呼吸同期や横隔膜同期が難しい患者さんには、息止め撮像を実施しています。 従来は画質の観点から息止めでの撮像は困難でしたが、AiCEの活用により画質の問題が解決され、高画質な画像が得られるようになりました。 息止め撮像によるリカバリーが可能となり、再撮像による検査時間の延長を大幅に抑えられています。 さらに、息止め撮像のMRCPでも、胆嚢・胆管・膵管が明瞭に描出され、消化器内科の医師からは「大変観察しやすくなった」とのコメントをいただいています(図2)。
AiCEは大変優れた技術ですが、ノイズ低減によるSNR向上技術のため、高分解能画像を得たい場合には収集マトリクスや加算回数の増加が必要となり、 撮像時間が延長してしまう問題がありました。これを解決するのが超解像Deep Learning技術であるPrecise IQ Engine(PIQE)です。 PIQEは画像のノイズ低減に加えて分解能の向上も可能とし、撮像時間を延長することなく、むしろ短縮しながら高分解能化を実現できます。
例えば、女性骨盤の矢状断T2強調画像(T2WI)の撮像では、従来2分20秒で撮像していた画像と同等の画質を、PIQEを使用することで、1分9秒で撮像できており、大幅な時間短縮ができています(図3)。本症例ではブスコパンなどの鎮痙剤は使用していませんが、撮像時間の短縮により呼吸や蠕動運動の影響が抑えられ、高画質な画像が得られました。その結果、子宮と腸管の境界が明瞭になり、junctional zoneといった層構造の評価も行いやすくなっています。
高分解能な撮像が求められる前立腺領域においてもPIQEは有用です。図4の前立腺癌の症例では、オリジナル画像ではノイズが目立ち、解像度も十分ではないため観察が難しい画像でした。しかし、PIQEを適用することでSNRが向上し、高分解能化が実現され、前立腺内部の視認性が向上しました。本症例では精嚢への浸潤疑いが指摘されておりその辺縁部もオリジナル画像と比較して明瞭に描出されています。
さらに、PIQEが特に威力を発揮するのは、整形領域です。図5に示す距骨骨挫傷の症例では、オリジナル画像と比較して、PIQE適用画像では骨挫傷がより明瞭で、骨梁に沿った病変の広がりが把握しやすくなっています。当院では、適用可能なシーケンスには積極的にPIQEを使用しており、撮像時間短縮と高分解能画像の両立を実現しています。この症例に限らず、整形領域の様々な症例でも非常に鮮明な描出が可能です。

内膜症性嚢胞
図.3 内膜症性嚢胞
精嚢浸潤が疑われる前立腺癌
図.4 精嚢浸潤が疑われる前立腺癌
距骨骨挫傷
図.5 距骨骨挫傷

歪み低減技術の効果にも驚き

前立腺癌における従来法とRDC DWIの比較
図.6 前立腺癌における従来法とRDC DWIの比較

拡散強調像の歪み低減技術RDC DWIは臨床的に非常に有用だと感じています。 本技術は、位相エンコード方向における歪み方の違いを利用してDWIの歪みを低減するものです。 当院では1台体制で全身の様々な検査に対応していますが、乳腺や全身の転移精査など、幅広い部位のDWIで効果を実感しており、重宝している技術の1つです。 図6は、前立腺癌のT2WIとDWIのFusion画像で、RDC DWIの適用前後で歪みが大きく低減しているのが分かります。 さらに、b=2000という高いb値で撮像しても高画質なDWIが得られるため、Vantage Orianの高い装置スペックを実感しています。

装置更新後の病院経営へも大きく貢献

導入後3ヶ月の昨年検査数との比較
図.7 導入後3ヶ月の昨年検査数との比較

Vantage Orianは、画質向上や撮像時間の短縮が可能なだけでなく、病院経営にも貢献する装置だと感じています。 稼働後3か月の検査数を前年同期間と比較すると、旧装置では約1100件だったのに対し、Vantage Orianでは約1300件の検査を実施しています。 3か月間で約200件、1日換算で約4件多く実施できるようになり、現在では1日平均24件の検査を行っています。 AiCEやPIQEにより、ルーチン検査で合格ラインの画像を取得するための撮像時間が大幅に短縮できたことも大きな要因です。 その結果、救急患者や近隣病院からの紹介患者、予約外の急な外来患者などの飛び込み検査にも柔軟に対応でき、検査数の増加につながっています。
また、AiCEやPIQEにより、ルーチン検査で担当技師が変わっても同じクオリティの画像を安定して得られることや、 充実したサポート体制により様々な検査に従来よりもスムーズに対応できることも、撮像件数を増やせている要因だと感じています。 MRI 1台体制でありながら、地域医療の中核として多くの検査を日常的に実施する必要のある市中病院にとって、非常に大きなメリットを提供してくれる装置だと考えています。

将来の展望について

キヤノンMRIの大きな特徴である非造影MRAの撮像には、大変興味を持っています。患者の負担を抑えつつ様々な血管を描出できる非造影検査は、今後さらに需要が高まると考えています。 今後も検討を進め、腎動脈Time-SLIPをはじめとした様々な非造影撮像にも積極的に挑戦していきたいと考えています。

  • *本記事のAI技術については設計の段階で用いたものであり、本システムが自己学習することはありません。
  •  記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。掲載内容は予告なく変更する場合があります。掲載内容はオプション構成品を含みます。

一般的名称 超電導磁石式全身用MR装置
販売名 MR装置 Vantage Orian MRT-1550
認証番号 230ADBZX00021000
製造販売元 キヤノン株式会社