Vantage Galan 3T / Supreme Edition 導入事例
速さも画質も妥協なし! 検査数21%増のMRI導入事例
入井 亮介 技師 社会医療法人医翔会 札幌白石記念病院 放射線技術室 診療技術部長
平田 秀喜 技師 社会医療法人医翔会 札幌白石記念病院 放射線技術室 放射線技術室長
Vantage Galan 3T / Supreme Edition 導入事例
入井 亮介 技師 社会医療法人医翔会 札幌白石記念病院 放射線技術室 診療技術部長
平田 秀喜 技師 社会医療法人医翔会 札幌白石記念病院 放射線技術室 放射線技術室長
北海道札幌市に位置する社会医療法人医翔会 札幌白石記念病院(病床数:103床)は、脳神経外科専門病院として開院し、頭から足の先までの動脈硬化性病変の治療に注力するとともに、脳卒中の予防から回復期医療まで幅広く対応しています。現在では、循環器内科、心臓血管外科も開設しており、幅広い血管治療にも注力しています。診断の要であるMRI装置は3台が稼働しており、1日あたり約70件という非常に多くの検査を実施しています。
今回は、3T MRI装置 Vantage Galan 3T / Supreme Edition への更新を決めた理由と導入後の評価について、放射線技術室の入井診療技術部長および平田放射線技術室長にお話を伺いました。
― 装置選定時に、どのようなことを重視しましたか?
当院は検査件数が非常に多く、加えて予約外の当日検査にも対応しているため、従来装置では検査待ちが長時間化する傾向がありました。そのため、いかに待ち時間を短縮するかが大きな課題となっていました。実際、長い待ち時間が原因で患者さんからの不満や医師からの検査遅延に対する指摘も多く寄せられていました。こうした状況を踏まえ、装置選定においては「短時間撮像」と「検査スループット向上」を最も重視すべきポイントとしました。
― Vantage Galan 3T / Supreme Editionを選択された理由を教えてください。
Supreme Editionは最優先課題であった短時間撮像および検査スループットの向上が実現可能であると確信したためです。特に短時間撮像については、各社ともDeep Learning Reconstruction(DLR)を活用した短時間撮像の提案を行っていましたが、画質の劣化を伴う短縮では臨床的価値が下がるため、高画質を維持したうえでの撮像時間短縮が選定上の重要な判断基準となりました。
DLRを用いた撮像時間短縮の提案が各社からありましたが、画質との両立が評価の決め手となりました。Supreme Editionを選定した大きな理由のひとつは、DLRを使用したデノイズ技術のAdvanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)や超解像技術Precise IQ Engine (PIQE)が搭載されている点でした。
特に、PIQEが活用できる点は、短時間撮像と画質の両立を図るうえで非常に大きなメリットがあると考えました。従来、短時間撮像を実現するためには、位相方向のマトリックスを下げたり、PIのリダクションファクターを上げたりする必要がありましたが、それにより空間分解能やSNRの低下といった問題が生じていました。しかし、PIQEの活用により、これらのデメリットを克服し、従来と同等の画質を維持したまま撮像時間が短縮できると判断しました。
また、PIQEは短時間撮像だけでなく、手術支援画像のように高い分解能が求められる場面においても有用であると考えました。最大3倍の分解能向上が可能であるPIQEを用いれば、これまで描出が難しかった術野周辺の微細な組織や血管の視認性が向上し、より有用な手術支援画像の提供が可能になると期待しています。
なお、装置選定にあたっては4社の装置を見学し比較した結果、Supreme EditionはAiCEやPIQEによって短時間撮像と高分解能を両立できる点が当院のニーズと合致しており、導入を決定しました。
― 導入後、撮像時間は短縮しましたか?
AiCEやPIQEの活用により、従来と同等の画質を維持したまま撮像時間の短縮が可能となりました。2DシーケンスではPIQEを活用することにより、従来装置では約6分を要していた撮像がSupreme Editionでは2分25秒で完了しており、61%の時間短縮を実現しています(表1)。特にT2WI (FASE 2D)にPIQEを適用することで、わずか5秒という極めて短時間の撮像を実現しました。また、MRAにおいても、AiCEと3D高速撮像技術Fast 3Dモードを併用することで、2分36秒で撮像可能です。なお、撮像時間の短縮と画質の両立は重要ですが、PIQEの活用によって高画質が担保されており、病変も鮮明に描出されています。(図1)。
診療科の医師からも画質に関して否定的な意見は出ておらず、診断に十分な品質が確保されていると評価されています。その結果、頭部のフルシーケンスでも画質を担保しつつ約5分で完了できる検査体制を実現できました(図2)。
― 導入後、検査のスループットは変わりましたか?
検査スループットは大きく向上しました。Supreme EditionはDLRによる撮像時間短縮に加えて、患者さんの入室から撮像開始までの一連の流れを支援するアシスト機能が備わっています。具体的にはポジショニングを支援するシーリングカメラと断面設定を支援するAuto Scan Assistが搭載されています。当院ではオートスタートも活用し、患者さんを寝かせて対象部位をカメラで自動検出し、ドアを閉めると撮像が自動で開始される仕組みです。
当初は運用に不安もありましたが、いずれの機能も精度が高く、修正の必要もほとんどなく撮像が行えています。技師にとっては非常に有用で検査の再現性向上や技師間のばらつきの軽減にも寄与しています。Supreme Editionはこれらの機能とDLR技術の組み合わせにより、患者さんの入室から退室までの検査全体に要する時間は、従来の約20分から11分5秒へと大幅に短縮されました(図3)。
検査スループット向上により、技師の時間外勤務が減少しました。以前は検査が17時を過ぎてしまうことも多くありましたが、Supreme Editionになってからは検査時間の短縮により、現在は日中の業務時間内に病棟や救急の検査を実施できるようになり、時間外対応の検査件数は減りました。検査時間の短縮は我々技師の業務負担の軽減だけでなく、患者さんにとっても大きなメリットがあると感じています。
― 導入後、検査数は変わりましたか?
検査スループットの向上により、前装置の頃と比べて検査数は月平均で21%増加し、経営面においても大きなメリットであると考えています(図4)。
― さいごに、Supreme Editionとはどのような装置ですか?
これまでMRIに携わる中で、撮像時間と画質はトレードオフの関係にあるのが当然とされ、そのバランスを考慮しながら撮像条件を設定してきました。しかし、Supreme Editionは、そのMRIの常識とも言えるトレードオフを覆し、高画質と短時間撮像を両立する革新的な装置です。
最新のDLR(Deep Learning Reconstruction)を用いたデノイズ技術AiCEや超解像技術PIQEを搭載しており、従来と同等以上の高画質を維持しながら、撮像時間の大幅短縮を実現しています。これにより検査スループットが向上し、業務効率の改善や患者満足度の向上に寄与しています。
また、撮像時間短縮だけでなく、手術支援画像など高分解能が求められる検査にも対応可能な点が大きな特徴です。患者さんの負担軽減やスタッフの業務負担軽減に直結するため、多忙な医療現場において非常に有用な装置と言えます。
他施設へのおすすめとしては、検査数が多く待ち時間短縮や効率化を図りたい病院に特に適しており、経営面でも検査件数増加による収益性向上が期待できます。先進技術による高画質・短時間撮像の両立を目指す施設に自信を持って導入をお薦めします。
当院は稼働からまだ1年経っていませんが、DLR技術のより良い活用を模索しつつ、日々の撮像業務に大きな期待とやりがいを感じています。この一見矛盾しているような感覚を持ちながら検査に臨めるのもSupreme Editionを選定したからこそだと実感しています。
今後も、未知の臨床ニーズに応える有用な画像の追及を続けつつ、日々の検査に取り組んでいきます。