SMI Angio modeによる微小血流評価の新展開
―リウマチ診療への可能性―
川尻 真也 先生
長崎大学病院
川尻 真也 先生
長崎大学病院
リウマチ領域における関節超音波検査は、プローブの高周波化による空間分解能の向上やドプラ法の改良により、臨床現場で広く活用されている。 特に滑膜炎の評価においては、肥厚した滑膜内に存在する低流速の微細な異常血流を検出することが重要である。 関節リウマチ (RA)をはじめとしたリウマチ性疾患の評価には、カラーおよびパワードプラが広く用いられるが、 Superb Micro-vascular Imaging (SMI)は従来のドプラ法と比較して低流速血流の検出能に優れ、早期病変の可視化や臨床的寛解下における残存炎症の評価への有用性が示唆されている。 近年、新たに開発されたSMI Angio modeは、従来SMIの特長を維持しつつ微小血流の分離能をさらに高めた技術であり、リウマチ性疾患への応用が期待されている。
従来のSMIは、組織の動きの特徴を解析することで低流速血流とモーションアーチファクトを分離し、従来のドプラ法では描出困難であった低流速血流を可視化した。
一方で、図1に示すように末梢領域など血管が密集する部位では、隣接する血流信号が重なり合い、血流の分離能や視認性に限界があった。
SMI Angio modeでは、血流信号の局所的な位置情報に着目した統計解析をフレーム方向に導入することで、ノイズやアーチファクトを抑制し、
隣接する微小血流をより細く明瞭に分離して描出することを可能とした。これにより、血流構造の立体的理解や微小血管ネットワークの視認性が向上した。
さらに、従来より長時間の解析を行うTime Smooth設定と統計解析を組み合わせた新しいアルゴリズムを追加することで、微弱な血流に対する感度がさらに向上した。
SMI Angio modeは、従来SMIの長所である高感度かつ高フレームレートを保持しつつ、“微小血流の分離能”と“微弱血流の検出感度”が大きく向上したことが特徴である。
SMI Angio modeは微小血管の分離描出に優れていることから、リウマチ性疾患の早期診断や病態の把握につながることが期待される。 ここでは、リウマチ性疾患の代表的な病変を提示し、SMI Angio modeの臨床的意義について考察する。
1.RAにおける膝関節滑膜炎
膝蓋上嚢では乳頭状に増殖した滑膜内に新生血管を反映した樹枝状の血流シグナルが描出されている。SMI Angio modeではこれらの血流構造がより明瞭に分離され、滑膜炎の量的および質的評価に寄与する可能性がある。
2.RAにおけるMCP関節滑膜炎
MCP関節はRAで罹患頻度が高く、早期診断において重要な評価部位である。
異常血流を伴う滑膜肥厚の検出は関節破壊進行の予測因子となり得る。SMI Angio modeは微小血流を高感度に描出することで、従来法では描出困難であった早期炎症の検出に寄与すると考えられる。
3.RAにおける尺側手根伸筋腱鞘滑膜炎
腱鞘滑膜炎はRAの早期から認められる代表的病変であり、特に尺側手根伸筋腱鞘滑膜炎は診断の手掛かりとなる。
SMI Angio modeでは腱鞘滑膜内の微細血流が明瞭に描出されている。
4.脊椎関節炎における足底腱膜炎
付着部炎は脊椎関節炎の重要な病態であり、足底腱膜付着部の血流シグナルは通常のドプラ法では検出困難な場合が多い。
SMI Angio modeは高感度に微小血流を描出できるため、付着部炎の早期検出や活動性評価に有用であると考えられる。
SMI Angio modeは従来のSMIの高感度・高フレームレートという利点を保持しながら、微小血流の分離能および微弱血流の検出感度を大きく向上させた技術である。 リウマチ性疾患においては、肥厚滑膜内の新生血管や付着部炎に伴う微細血流を明瞭に描出できる可能性があり、早期診断や活動性評価への寄与が期待される。 また、ブルーミングアーチファクトの低減や滑膜外血流との識別性向上により、異常血流の質的評価にも寄与すると考えられる。 これらの特性は、関節破壊や機能障害に関連し得る炎症性血流の把握を通じて、治療介入のタイミングや治療強度の判断など日常診療における臨床的意思決定を補助する可能性がある。 臨床現場でのさらなる検証を通じて、リウマチ性疾患診療の質向上に貢献することが期待される。