SMI Angio modeがもたらす運動器診療の変化
―肉離れ評価からインターベンションまで広がる可能性―
和田 誠 先生
医療法人社団誠幸会 わだ整形外科クリニック 院長
和田 誠 先生
医療法人社団誠幸会 わだ整形外科クリニック 院長
運動器疾患の診断や治療において、血流動態を捉えることは病態理解と治療方針の決定に欠かせない要素となっている。キヤノンメディカルシステムズは2014年に微細血流の描出を可能にするSuperb Micro-vascular Imaging(SMI)をリリースし、カラードプラでは捉えにくかった低流速の血流を可視化する技術として現在まで幅広い臨床分野で活用されている。その後も改良を重ね、2025年にはさらに進化したSMI Angio modeを搭載。より血流視認性や血流の分離能が向上した。本レポートでは、長年スポーツ整形領域の臨床と研究に携わり、超音波診断装置を用いた診療を行っているわだ整形外科クリニック院長の和田誠氏に、SMI Angio modeの有用性と臨床的価値について伺った。
検査を行う阿部技師に、バージョンアップ後の検査の実態をお伺いしました。
整形外科領域において、血流の可視化は組織の病態を理解するうえで欠かせない。和田氏は「カラードプラはこれまでも使っていましたが、少しの手振れでも反応してしまうことがありました。SMIはカラードプラに比べてもモーションアーチファクトが少なく、微細な血流も拾える点が大きな違いだと思います。」SMIはカラードプラでは確認が困難であった低流速の血流をノイズに埋もれずに抽出でき、炎症や微細血流の評価をより高精度に行うことを可能にした。
同クリニックではSMIの導入により、和田氏の研究テーマのひとつである肉離れの過程を捉えることも可能になったと評価する。「肉離れの回復には血管新生が深く関与しています。どのように血流が通っていて、どう再構築されていくかを追う上でSMIは非常に重要です。」SMIを活用することで、損傷部位の血流変化を経時的に観察でき、評価に役立っているという。
2025年に登場したSMI Angio modeでは、従来のSMIと比較して血流描写がよりシャープになった。「血流が細かい枝分かれまで描出できるのが印象的でした。浅部から深部へ流れる血流も縦方向にしっかり追えるので、血管が分岐していく様子まで観察できます。」この技術により、筋肉や腱といった軟部組織の血流もリアルタイムで視覚化されるため、病態把握の精度が高まると期待を寄せる。
和田氏は、SMI Angio modeが治療戦略の立案にも有用であると指摘する。「SMI Angio modeは深部の血流も安定して捉えられます。組織の連続性や血管の走行方向が見えることで、治癒過程の理解が深まります。これにより、ハイドロリリースやPRP注射、ブロック療法などといったガイド下注射と組み合わせた介入にも役立ちます。」従来は造影剤を用いなければ確認が難しかった血流パターンを、非侵襲的に捉えられることは大きな進歩となる。「造影剤を使用しなくても血流を詳細に評価できるというのは、クリニックレベルでも強みになります。慢性的な腱障害や’もやもや血管’の観察にも有効で、スポーツ障害を診る先生方も広く活用できるのではないでしょうか。」
図1 半腱様筋起始腱の肉離れ(PLI-1205BX)
ハムストリングの中でも半膜様筋(SM)の起始腱(SMT)に生じた肉離れであり、半腱様筋(ST)の深層に腫大したSMTを認めた。SMI Angio modeでは微細な血流を確認できた。臨床的には、SMの起始部から遠位の筋腱移行部にかけて広範に腫大することが多く、断裂の中心を特定するのが困難な場合がある。SMI Angio modeでは血管が線状に描出され、血流の方向や血管ネットワークを把握できるため、損傷が最も強い部位、すなわち受傷の中心を推定しやすい。さらに経時的観察により血流新生の過程を評価でき、治療フェーズの予測に有用であると考えられる。
図2 大腿二頭筋長頭の遠位筋膜部の肉離れ(PLI-1205BX)
本症例は、ハムストリング肉離れの中でも症状が比較的軽く、損傷部位の特定が困難な大腿二頭筋長頭の遠位筋膜部損傷である。
SMI Angio modeを用いることで、損傷部における血管新生を描出することができた。短軸で近位の正常部から遠位の損傷部へ連続的に観察することで、深さ約3cmの部位においてもPLI-1205BXプローブで評価が可能であった。
経時的な観察により、治癒過程の推定に有用であると考えられる。
図3 腱の実質の腫脹を認めた膝蓋靭帯炎(PLI-1205BX)
膝蓋靱帯炎にはさまざまな病態があり、膝蓋骨付着部や脛骨粗面付着部に生じるものがある。本症例では、膝蓋腱実質の腫脹を認めた。
SMI Angio modeでは、深層から膝蓋腱内へ流入する血流を描出でき、血管の分枝形態も把握可能であった。
すなわち、腱実質内の血流反応に加え、流入血管を追跡できる点が、腱障害の病態評価に有用である。
図4 膝蓋靭帯炎の膝蓋骨付着部症(PLI-1205BX)
膝蓋靱帯炎の膝蓋骨付着部病変である。付着部は低エコーを呈し、靱帯線維の変性が示唆された。
SMI Angio modeでは付着部靱帯内および骨側に微細な血管増生を認めたが、骨内の血流についてはアーチファクトの可能性も考慮する必要がある。
最後に、SMI Angio modeが持つ臨床的意義についてこうまとめる。「SMI Angio modeは、これまでだったら造影剤を使用しなくてはならない場合でも、造影剤を使用せずに骨や腱近くの血流を詳細に捉えられるという点で非常に優れています。 今後は早期病変の発見やインターベンション支援など、超音波診断装置が’戦える診断技術’として発展していくことを期待しています。」 SMI Angio modeは低流速の微細血流をリアルタイムに描出することで、運動器診療における「評価」と「治療」をつなぐ橋渡しとなりつつある。
| 一般的名称 | 汎用超音波画像診断装置 |
|---|---|
| 販売名 | 超音波診断装置 Aplio i700 TUS-AI700 |
| 認証番号 | 228ABBZX00022000 |
| 一般的名称 | 手持型体外式超音波診断用プローブ |
|---|---|
| 販売名 | リニア式電子スキャンプローブ i18LX5 PLI-1205BX |
| 認証番号 | 228ABBZX00025000 |