Vantage Fortian 導入事例
脳神経外科専門病院がCanon 1.5テスラMRIを選んだ理由
佐藤 直隆 技師 大西脳神経外科病院 医療技術部 副部⾧
磯谷 直紀 技師 大西脳神経外科病院 医療技術部 放射線科主任 ※文中敬称略
Vantage Fortian 導入事例
佐藤 直隆 技師 大西脳神経外科病院 医療技術部 副部⾧
磯谷 直紀 技師 大西脳神経外科病院 医療技術部 放射線科主任 ※文中敬称略
兵庫県明石市に位置する医療法人社団 英明会 大西脳神経外科病院(病床数:182床)は、脳神経外科専門病院として明石市を含む東播磨地域の医療に貢献しています。脳卒中を始めとする救急医療に重点を置きながら、脳卒中の予防から回復期医療にも力を入れている病院です。診断の要となるMRI装置は4台稼働しており、1日120件と非常に検査数が多いのが特徴です。
同院で、なぜキヤノンメディカルシステムズ社製の1.5T MRI装置 Vantage Fortianに2台同時に更新されたのか、今回はその理由と導入後の評価を伺いました。
― 装置選定時に、どのようなことを重視されましたか?
佐藤当院は脳神経外科の専門病院ですので、MRI検査は頭部、脊椎がほとんどです。MRI4台で1日120件と非常に検査数が多く、15分の検査枠で収まりきらず、毎日のように1時間以上検査時間が延⾧していたことがMRI 検査の課題としてありました。また、脊椎の画質には特に不満がありましたので、検査の短時間化が実現できること、脊椎検査が短時間で綺麗に撮れるかどうかが重要な選定ポイントでした。もう1点は、閉所が苦手で検査できない患者さんも多数いらっしゃいましたので、開口径が広いことや、頭頚部コイルが開放感を感じられる設計になっているかなど、総合的に患者さんにやさしい装置を導入したいと思い、選定を進めていました。
— Vantage Fortianを選択された理由を教えてください。
佐藤当院のMRIは全て同一メーカーで統一されており、今回の2台同時更新においても、基本的には同一メーカーにする方針でした。ただ、既存マグネットを残したリニューアルでは最新装置と同じにはならず、開口径が広くならない点やコイルの取り回しが煩雑な点が変わらずそのままですので、中途半端なアップグレードになると思い、新品を導入したいと考えていました。
そんな中、学会のセミナーや発表でCanonのAI技術である「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(以下AiCE)」の話を聞いて、これは検討に加えないといけないと思いました。その後、近隣施設の画像を見せていただいたり、施設見学へも伺ったりした結果、一番短時間ながら画質が良く、コイルの取り回し、患者さんへのやさしさにも優れているのはVantage Fortianだと思い、導入したいと思いました。
ただ、先生方や経営層に既存メーカーから変更することを納得いただくのは、リニューアルと比べて価格も高くなってきますので苦労しました。最終的に決め手となったのは、脊椎と下垂体の画質でした。特に下垂体の「Precise IQ Engine (以下PIQE)」の画像は異次元の綺麗さだと感じました。価格差はありましたが、価格差以上にVantage Fortianの価値を認めていただくことができたのだと思います。
― 導入後、検査のスループットは変わりましたか?
佐藤全然違いますね。今までは基本的に15分枠で検査は収まらず、救急も1日7、8件ほど、検査枠が埋まっている間に入りますので、前述のとおり1時間以上検査が遅れることも多々ありました。導入後は、迅速に検査が行えますので、救急検査が入ってもすぐにリカバリーできるようになり、検査時間に余裕ができました。お陰様で今では、予約待ちも解消できており、スループット向上を実現できました。10分枠でも検査が可能な装置だと感じています。
磯谷撮像時間が短くなったのはもちろんですが、コイルの取り回しや寝台移動がスムーズになって患者さんの入れ替えが早くなったのも大きいですね。全体にスムーズな検査ができるようになった印象です。
佐藤検査の振り分けとしては、脊椎検査の画質が圧倒的に違うので全例Vantage Fortianに回しています。
磯谷これまで脊椎検査は頭部以上に時間のかかる検査でしたので、検査時間が延⾧する大きな原因になっていました。そのため、Axial撮像も枚数を絞っていましたが、その必要もなくなりました。Vantage Fortianに更新してからは、むしろ脊椎検査の方が検査時間が短くなりましたので、もっと入ってほしいとすら思っています。
― 選定時に気にされていた、閉所が苦手な患者さんへの検査状況はいかがでしょうか?
佐藤検査できない方は格段に減りました。継続して検査している患者さんからは、とにかく検査が楽になったという意見をよく聞きます。これは個人的な意見ですが、開口径が大きくなっただけでなく、デザインやカラーリング、照明の当て方、バーチャルスカイライトなどが患者さんに柔らかい印象を与えているように思います。そのような細かな気配りの積み重ねが、患者さんの検査に対する印象を変えていると思います。
磯谷撮像音に関してもVantage Fortianでは、遠くの方で鳴っているような印象を受け、振動が少ないことも患者さんの検査負担を軽減するのに役立っていると思います。
― 頭部領域の画質評価はいかがでしょうか?
磯谷MRAは短時間にも関わらず、非常に綺麗に撮像できています。これまでは、救急検査では範囲を絞って主要な血管だけ見えていればよいという考えでしたが、Vantage Fortianであれば2分半程度で従来ルーチンのMRA と遜色ない画質のMRAが撮像できています。
佐藤一番更新して変化が大きかったのは、下垂体です。
磯谷導入後の画像を見たとき、これまでとは全く別物だと思いました。
FOVを絞っているにもかかわらず、ノイズが少なく、正直感動しました。
佐藤下垂体は薄いスライスでの撮像が必要なため、画質確保のために撮像時間がどうしても⾧くなっていました。撮像するコントラストも多いため、大変時間がかかる検査でした。導入後は従来よりも撮像時間が短くなったにもかかわらず、薄いスライスながら画質は綺麗になっています。
PIQEの効果は、小FOVの撮像では、特に絶大だと思います。薄いスライスが必要になる腫瘍系、眼窩や頭蓋底でも効果を発揮すると思います。
磯谷もう1つすごいと感じた技術はRDC DWIです。これまでの常識では、歪みの影響で撮れないと思い込んでいた頭蓋底のDWIが、歪み少なく撮像できることに驚きました。
佐藤治療前検査としてテンソルを撮像しているのですが、これまでは小脳から出てくる経路に歪みが大きく、信頼性に疑問がありました。RDC DWIであれば、ほとんど歪み無く撮像できています。
― 脊椎領域の画質評価を聞かせてください。
佐藤脊椎は断然Vantage Fortianの方が綺麗だと先生方からもお声をいただきます。撮像時間が短いことが、画質にも好影響を与えていると思います。痛みの影響により、どうしても撮像時間が⾧いと動いてしまいます。
磯谷実際、各コントラスト1分程度で撮れますので、これまでと比べて撮り直しは格段に減っています。
佐藤導入後先生からは、Axial画像で脊髄神経のルートが分かりやすいと言われています。ヘルニアが圧迫している部分の状態がわかりやすいとのことです。これまで判然としなかった脊髄中心の高信号が診断しやすくなったとも聞いています。あとは、撮像時間が短くなってAxial画像の枚数を増やせるようになったことで、見逃しを減らすことができました。
磯谷Vantage Fortianの導入により、ギャップレスでの撮像になったことも大きな変化です。原理上、ギャップレスではSNRが低下するにもかかわらず、PIQEを使用することで画質を維持したまま撮像が可能になっています。脊椎は細かい構造も多い部位であるため、見落としを減らし、連続性を観察できる点は非常に重要だと感じています。
― ずっと同じメーカーを使われてきて、導入後苦労されませんでしたか?
佐藤正直、導入前はそれが一番不安でした。結果としては特に困らなかったです。
磯谷半日あれば全員ルーチン検査は問題なく実施できるようになりました。日本語表記もうれしい点です。画質面の調整も柔軟に対応可能です。当院では既存3T 装置の画質に寄せる方向に条件を調整した結果、先生方も全く違和感なく読影でき、スムーズに運用が進んでいます。非常に融通のきく装置だと思います。
佐藤アプリケーションスペシャリストのサポートも大きいです。アプリWebも非常に勉強になりました。取扱説明書はどうしても取っ付きにくい部分がありますが、平易な言葉でわかりやすく解説しているので大変助かっています。
磯谷我々の「こうしたい」、「ああしたい」という日々の要望を、アプリケーションスペシャリストの方に相談すれば改善策を提案してくれるという安心感があります。
一般的名称 | 超電導磁石式全身用MR装置 |
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販売名 | MR装置 Vantage Orian MRT-1550 |
類型 | Vantage Fortian |
認証番号 | 230ADBZX00021000 |